ベースアップ評価料は「算定できた」で終わりではありません。賃金改善措置を対象職員に確実に届け、かつ届出内容と実態を一致させるためには、雇用契約書・労働条件通知書への正確な落とし込みが欠かせません。本記事では、令和8年度診療報酬改定を踏まえ、クリニックの院長が実務でつまずきやすいポイントを、顧問社労士との対話形式で解説します。
ベースアップ評価料の基本と2026年の実務上の注意点
院長: 今年もベースアップ評価料を算定するつもりですが、去年と同じ運用でいいですよね?
顧問社労士: そこが要注意です。ベースアップ評価料は対象職員一人ひとり対象となる手当や支給ルールを書面で確認できる状態にしておく必要があります。特に2026年度は施設基準の運用がより厳格に確認される傾向にあるため、雇用契約書の記載が曖昧なままだと、実地指導で「賃金改善の実施が確認できない」と指摘されるリスクがあります。
雇用契約書に反映すべき3つのポイント
| 項目 | 注意点 |
|---|---|
| ① 賃金改善の内訳明示 | 基本給または諸手当のどちらで改善したかを契約書上で判別できるようにする |
| ② 対象職員の範囲の整合性 | 看護職員・事務職員など算定対象の職種区分と雇用契約書の職種欄を一致させる |
| ③ MS法人所属者の取扱い | MS法人から出向・派遣されている職員は原則対象外となるため、契約形態を明確にする |
「2/3ルール」と雇用契約書の関係
院長: 算定額の2/3以上をベースアップに充てる、というルールがあると聞きましたが、これも契約書に関係するんですか?
顧問社労士: 大いに関係します。ベースアップ評価料による収入は、3分の2以上を基本給または毎月決まって支払われる手当(ベースアップ)の引き上げに充当し、残りの3分の1以下を賞与等に充てるという配分ルールがあります。これは対象職員の人数割合の話ではなく、算定収入の使途配分の話です。基本給や毎月の手当を引き上げる以上、その引き上げ額は雇用契約書または労働条件通知書の賃金欄に明記して、恒常的な賃金改善であることを証跡として残す必要があります。単に「一時金として支給した」という運用では、2/3要件を満たしたと説明できなくなるので注意してください。
e-muを使った雇用契約書管理の効率化
院長: 言われてみると、ベースアップ分の手当や支給ルールを手当額を職員ごとに契約書に反映して、しかも改定のたびに見直すのは正直手間ですね…。
顧問社労士: そこはクラウド型の雇用契約書管理サービス「e-mu(エミュー)」を使うと負担がかなり軽くなります。賃金項目をテンプレート化しておけば、ベースアップ評価料に対応した手当区分を職種・雇用形態ごとに一括で反映できますし、改定履歴もクラウド上に残るため、実地指導の際に「いつ・誰の・どの賃金項目を改定したか」を即座に提示できます。
💡 e-muでできること(ベースアップ評価料対応の例)
職種・雇用形態別に賃金改善のテンプレートを作成し、対象職員へ一括配信
基本給・手当の改定履歴をクラウド上で自動保存し、証跡として管理
労働条件通知書との内容整合をシステム上でチェックし、記載漏れを防止
次回改定時も既存データを引き継いで、更新作業を最小限に短縮
紙やExcelでの個別管理では、対象職員が増えるほど改定履歴の突合作業が煩雑になります。e-muのようなクラウドサービスを活用することで、算定要件の充足を書面で証明できる体制を、日常業務の延長で維持できるようになります。
まとめ:雇用契約書は算定要件充足の「証拠書類」
ベースアップ評価料は、算定するだけでなく「賃金改善を確実に実施した」ことを書面で説明できる状態を維持することが重要です。雇用契約書・労働条件通知書は、その最も基本的な証拠書類になります。改定内容や施設基準の解釈は年度ごとに変わるため、契約書のひな形も定期的な見直しが欠かせません。
よくある質問(FAQ)
Q. ベースアップ評価料の対象職員は雇用契約書のどこで確認すればよいですか?
A. 職種欄、所定労働時間、雇用形態(常勤・非常勤)の3点を確認します。これらが施設基準の対象職種区分と一致しているかがポイントです。
Q. MS法人に所属する事務職員も対象になりますか?
A. 原則としてMS法人所属者は対象外です。クリニックと直接雇用関係にあるかどうかを雇用契約書で明確にしておく必要があります。
Q. 雇用契約書のひな形はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
A. 診療報酬改定や施設基準の運用変更があるたびに見直すのが原則です。特に年度替わりのタイミングでの点検をおすすめします。
執筆:社会保険労務士 山本達矢(社会保険労務士法人WILL)



